★はじめに
 この物語は「世界樹の迷宮3」のストーリーを追いながら展開していくリプレイ式の小説です。
 物語は二人の少年がそれぞれのギルドで冒険をしながら進みます。ゲーム内容のネタバレに関わりますので、未プレイの方、プレイ状況が作者より進んでいない方はご注意下さい。
 システム的な決まりごとでは、サイコロで振った日数ごとにそれぞれのギルドの探索を行います。例えばプレイ前に6が出たらゲーム内日数で6日一方のギルドの冒険を行います。その後サイコロを振り次に3が出たら他方のギルドに切り替えて3日冒険します。ギルドや船はゲーム内では一つしか持てませんので、一つのギルドに統合して物語上別々として扱います。
 それぞれのギルドの活動は、
★ギルド『ツーカチッテ』:通常の小説形式
★ギルド『C.A.S.W』:ギルドメンバー「ナナビー」の日記形式

で綴られていきます。
 二つのギルドと二人の少年の冒険がこの迷宮の果てにどんな結末を迎えるのか、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

六代目 twitter

プロローグB「受難の少年ナナビー」

?月?日
 今、僕は全く自分の置かれている状況に整理がつかないので、いつものように日記を書いて気を落ち着かせることにしました。
 まず今日のことを書く前に一昨日のことから書きます。いや、もしかしたら一昨日じゃないかもしれません。今が何月の何日なのかわからないので、もしかしたらずっと前のことかもしれないのですし。
 なのでとりあえず、事の発端から整理するのがいいと思いますのでそうします。それがいい。

 その日、お父さんが亡くなりました。
 と言っても突然のことではなく、ずっと具合が悪く臥せっていたのがついにということなので心の準備はできていました。
 準備ができていなかったのはその後のことです。
 毎日のように病床に押しかけていた連中が僕に押しかけてきたのです。
 お父さんは農場の経営者でした。お母さんは僕が生まれて間もなく亡くなったそうですが、農場の動物達に囲まれていた僕は、たまにしか寂しくありませんでした。アーモロード一の大農場なのだと、元気な頃お父さんはいつも自慢げに言っていました。
 ただ、僕は動物には好かれるが経営の才能がないので友人の経営者に譲ろうか、とも話していました。

 押しかけてきた連中は、その友人は譲渡を断ったと、よくわからない書類を僕の顔に押し付けました。そして、この農場の権利を買い取ると、一方的に言ってきました。
 経営の能力がないと言われた僕でしたが、お父さんから聞いた話の端々から自分の家の農場の価値くらいはわかっていました。
 彼らがテーブルに叩きつけた皮袋に入っていた金貨はそこいらの土地と家が即金で買えるほどの額でしたが、それがお父さんの農場の価値には程遠い額であると分かりました。
「それだけあれば新しい生活をするには充分でしょう。盆暗な跡取りには過ぎた金額だ」
 最後にそう言って、僕は家を失いました。とぼとぼと家だった場所を出る時、一匹の羊だけが僕の後をついてきました。
 僕に一番よく懐いていていた、羊のナンナンでした。

 そうして、ナンナンとふたりきりで大金を持ったまま宿を探して街を歩いていたのが多分、昨日のことです。
 繁華街に入るころ、突然後ろから頭をガツンと殴られた感じがしました。受身を取ることもできず道に倒れこんで、口に砂が入ったのだけは覚えています。
 覚えているのはそこまでなのです。
 今は外が明るいので、多分翌日の昼なのではないかと思っています。
 おそらくは、誰か僕が持っているお金を狙った強盗に襲われたのだと思います。その証拠に皮袋だけがなくなっています。
 ここは、多分宿屋だと思うのですが、それ以外の荷物はベッドの下に置いてあります。ベッドの下からナンナンが僕のことを見ています。道に倒れているところを誰かに助けられたのでしょうか。
 お腹は、不思議と空いていません。最後に食べたのは多分一昨日の夜だと思うんですけど。
 お父さんの葬儀はきちんと行われたのでしょうか。あの連中が、多分関係者が集まると不利になると思ったのでしょう、ちゃんとするといってお父さんの遺体まで僕から奪いました。
 僕は何か悪いことをしたのでしょうか。
 ナンナンが鳴いています。

 誰かがドアをノックしています。
 助けてくれた人でしょうか。


 簡単に話を聞きました。
 僕を助けてくれたのは、冒険者ギルドの方だそうです。
 ギルドの名前は『C.A.S.W』。
 さっき部屋に入ってきたのはギルドリーダーのモッズさん。バリスタなのだそうです。
 ただひとつ、いや二つ不思議なことがありました。
 僕が倒れていたのは繁華街近くの道ではなくて、この宿屋の前だったそうです。
 もうひとつ、今日はあの日から三日経っているのだそうです。
 なにがどうしてそうなったのかは分かりませんが、ひょっとしたら動かない僕をナンナンが運んでくれたのかもしれません。

 それはともかく、モッズさんに事情を説明したところ
「帰る家も金もないってんなら、うちのギルドで一緒に冒険者でもするか?」と申し出ていただきました。
 他にあてがないので、僕なんかでいいのですかと聞くと、「ん、困った奴を見捨てて置けない性分でね。それに、賢者ノージ曰く『こいつの使い道はまだあるぜーっ!!』ってな。どんなヤツでも何かの役にゃ立つんだ。食い扶持を稼いでもらえる程度には働いてもらうから覚悟しとけ?」と言ってくださいました。
 僕はそのノージさんという方を知らないので意味はよくわかりませんでしたが、とにかく僕でもギルドの一員として参加させていただけるとのことなので、これからはこのギルドで冒険者として頑張って行こうと思います。前向きなのがお前のいいところだとお父さんにも良く言われました。
 ナンナンがすりよってきました。そうだ、この子はどうなるんでしょう。冒険に連れて行ってもいいのでしょうか。そのへんも含めて、後でモッズさんに聞いてみようと思います。今はまだ、頭がぼんやりしているので少し眠ろうと思います。
 最後に一応確認、僕の名前はナナビー。農場を追われたファーマー。これは間違いない。



もくじ

キャラクター紹介
★冒険記
プロローグA「放たれた少年ナーバン」
プロローグB「受難の少年ナナビー」
始まりの六日間
01 02 03 04 05 06
ナナビーのぼうけん
01 02

前作「ゆぐどらぐらし」
ツーカチッテ

C.A.S.W

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