★はじめに
 この物語は「世界樹の迷宮3」のストーリーを追いながら展開していくリプレイ式の小説です。
 物語は二人の少年がそれぞれのギルドで冒険をしながら進みます。ゲーム内容のネタバレに関わりますので、未プレイの方、プレイ状況が作者より進んでいない方はご注意下さい。
 システム的な決まりごとでは、サイコロで振った日数ごとにそれぞれのギルドの探索を行います。例えばプレイ前に6が出たらゲーム内日数で6日一方のギルドの冒険を行います。その後サイコロを振り次に3が出たら他方のギルドに切り替えて3日冒険します。ギルドや船はゲーム内では一つしか持てませんので、一つのギルドに統合して物語上別々として扱います。
 それぞれのギルドの活動は、
★ギルド『ツーカチッテ』:通常の小説形式
★ギルド『C.A.S.W』:ギルドメンバー「ナナビー」の日記形式

で綴られていきます。
 二つのギルドと二人の少年の冒険がこの迷宮の果てにどんな結末を迎えるのか、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

六代目 twitter

ナナビーのたたかい(その1)

 皇帝ノ月 十四日


今日もまた、一階を探索しました。
先日モッズさんは出来れば二階へ上がろうと言ってくださったのですが、今日の僕はそれを断りました。
もちろん意味もなくではなく、「なんとなく上の階へ進む」というのがはばかられたのです。
何か上へ行っても大丈夫、そう思えることが必要で、その証拠、確証……素直に言えば自信が欲しかったのです。
「確かに……時間空けてすぐに次の段階ってのも問題か。賢者ノージ曰く『戦いに於いて足手まといなのは力のない者では無い。覚悟の無い者だ』ってな。君自身に覚悟がなければ力があってもかえって危険だってのには同意だ。そうだな、それじゃあ……」
モッズさんの提案は単純かつ、今の僕には非常に恐ろしいものでした。しかし、それができるならば確かに僕は自信が持てるだろうと思ったので承諾しました。
「あのヤマネコをぶっ倒してやろうぜ」


樹海に入ってしばらく歩くと、案の定何度も僕が背中を見せたあのヤマネコの姿が見えました。
「い、行きます!」
「おう!」
僕は陣形の都合上後ろからですが気合を入れました。モッズさんが皆に説明してくれたので、今回は逃げることはせず真正面から立ち向かいます。
こちらに気づいたヤマネコが地をひと蹴りすると一瞬のうちに互いが戦闘の間合いになりました。先に発見したのは僕たちでしたが、攻撃を仕掛けるのは向こうの方が早く、後手を選ばざるをえなくなりました。
まず一撃、サカシノさんが盾に攻撃を受けました。大きな体から繰り出される爪の一撃は盾ごしであってもサカシノさんをひるませるだけの威力があるようです。
「くっ」
と小さく声を漏らしたのを合図にしたように全員が攻撃を仕掛けます。
テンマ君が刀で切りつけ、動きを止めたところにコーヴィアちゃんの術が当たります。さらに怯んだ隙に至近距離からモッズさんの弩、そして僕の小剣もあまり深くはありませんがヤマネコの皮膚を切り裂くに至りました。
ぞ、と重い手ごたえが手に伝わりました。
今まで倒してきたドリアンや魚とは違う、哺乳類の皮膚を斬る感触に一瞬の戸惑いを感じましたが手負いになったヤマネコはそんな逡巡を許してはくれません。
狩りをする動物は群れの中で一番弱い者を狙う、とお父さんから聞いたことがあります。
先ほどは先制攻撃を仕掛けたため一番手近なサカシノさんに攻撃したようですが、今度は違います。パーティーで一番弱い僕が狙われたのは当然でした。
「ナナビー!」
サカシノさんが咄嗟に盾を突き出したおかげで僕に届く爪が若干逸れました。しかし外れはしなかったのです。
血が出ていました。今までの小さな傷とは比べ物にならないはっきりとした流血が、くっきりと刻まれた腕の爪痕から。
いままで皆さんがこのヤマネコとの戦いを避けていたのはつまりこういうことです。
僕が狙われれば守りきれない、守りに専念したら倒せない。おそらく僕がいなければ皆がそれぞれの役割を分担するだけで倒せる相手なのです。
だから、だからこそ僕は叫びました。
「大丈夫です!というか、今です!」
ヤマネコは一番弱い僕をしとめきれなかったと見るやもう一撃を加えるべく構えました。しかしそれを許すほど、僕の仲間は甘くはありません。
がら空きの胴体に突き刺さる刀、顔面を焼く炎、撃ち抜かれる脳天。おそらくは絶命させていたでしょう。しかし、振り上げた爪は重力にしたがって僕へと落ちてきました。
モッズさんが叫びました。
「とどめだ!ナナビー!」
「はい!」
なんとか取り落とさずにいたナイフを反対の手に投げるように持ち替えて、崩れ落ちるヤマネコの胸にむけて突き上げました。
ずぶりという、皮を裂き肉を貫く独特の感触のあとにずしりとした重量感、というかそのまま倒れこんできたヤマネコの体の下敷きになってしまいました。


「大丈夫か?」
「いててて……あ、だ、大丈夫です!」
ヤマネコの下から引っ張りだされてそう問われ、腕の傷を見ると急に痛みが襲って来ました。血もまだ止まっていません。
「よくやった、どうだった?」
「えと、夢中でよく、わかりません」
正直に答えると、モッズさんがニヤリと笑いました。
「わからなかったかー、じゃあしょうがないよな?皆」
「モッズさんは意外と意地悪ですよね」
テンマ君が困ったように笑います。
「あまりやり過ぎないでくださいね」
「ここからは慣れの問題なのです」
メディカを僕に差し出しながらサカシノさんがモッズさんに笑い、コーヴィアちゃんが得意げに笑いました。
僕は受け取ったメディカを飲み干しながらも事態は全く飲み込めずに、それを他人事のように眺めていました。
そして傷の回復を見たモッズさんが笑いながら僕に言いました。
「んじゃ、もう一匹な」
「はぁ、えっ?」
モッズさんが指差した方向にこちらの様子をうかがっている別のヤマネコがいるのが小さく見えました。
「さあ、自信つくまで狩りまくるぞ!」
「え、ええ!?」
そうして、結局今日は暗くなるまでずっとヤマネコ退治を繰り返していました。
何度かピンチになる場面もありましたが、潔く逃げたりなんとか立て直したり、ともかく狩りまくりました。


あれだけ何度も倒したのに、今この手に残っているのは最初のあのヤマネコにトドメを差した時の感触です。
「もう大丈夫……です」
「そうか、じゃあ今日はこんなところだな」
もう消えてしまった傷跡のあった場所を見つめ、荷物から小剣を取り出してブンブンと振ってみました。
「明日からは二階でがんばるです」
「うん」
宿で持つ小剣は冒険中とは比べものにならないくらいに重く感じます。
「油断はしないでくださいね。慣れは慢心を生みますので」
「わかりました」
でも、あれは、あのヤマネコの重みはこれとは違うものでした。命の重みでした。
「気にしないで、とは言いませんが……これが冒険者という生き方なのですよ」
「……はい」
サカシノさんが言ったのはこのことでしょう。
皆のフォローで精一杯だった僕が始めて今日、本当の意味で戦い、敵を倒したのだと思いました。
これからの冒険で僕は何十何百という魔物を葬って進むのかもしれません。その時でも、今日の気持ちを忘れずにいたいと思います。
それが魔物であっても、その未来を奪うことに対する覚悟。僕に足りなかったのは上の階に行く心構えなんかじゃなく、きっとこれだ。
ナンナンが鳴いています。
今日は疲れました。もう寝ることにします。


皇帝ノ月 十五日


今日はついに二階へ行きました。
結果から書くと順調そのもの。
一階から思ったほどの差はなく、一部の魔物が大きいものになっていたり、群れの規模が大きくなっていたくらいで倒せないものは殆どいませんでした。
ただ一種類、巨大な体に巨大なくちばしを持った緑色の怪鳥だけは撤退を余儀なくされました。
テンマ君が言うには
「一階でヤマネコと渡り合えるようになった冒険者が次につまづく相手です。僕らも殆ど正面からは戦っていないです」
とのことで、倒せるがリスクが大きいので不意をつけた場合だけ排除する方針とのことです。


ああそうだ、二階にはもう一種どうしようもない魔物がいるのでした。
毒を撒き散らす大蜥蜴です。
上の巨大な鳥とは全く違います。挑めば必ず負ける相手だと、皆言っていました。死ぬと分かっている相手と戦うのは冒険ではなく無謀とも。
しかし、そんな話をしながらも皆の目は後ろを見てはいませんでした。いつか絶対に倒す、倒せるようになるという決意が見てとれる目でした。
だから僕もそう願って努力します!


二階を三分の一くらい探索して本日は終了です!



もくじ

キャラクター紹介
★冒険記
プロローグA「放たれた少年ナーバン」
プロローグB「受難の少年ナナビー」
始まりの六日間
01 02 03 04 05 06
ナナビーのぼうけん
01 02

前作「ゆぐどらぐらし」
ツーカチッテ

C.A.S.W

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