★はじめに
 この物語は「世界樹の迷宮3」のストーリーを追いながら展開していくリプレイ式の小説です。
 物語は二人の少年がそれぞれのギルドで冒険をしながら進みます。ゲーム内容のネタバレに関わりますので、未プレイの方、プレイ状況が作者より進んでいない方はご注意下さい。
 システム的な決まりごとでは、サイコロで振った日数ごとにそれぞれのギルドの探索を行います。例えばプレイ前に6が出たらゲーム内日数で6日一方のギルドの冒険を行います。その後サイコロを振り次に3が出たら他方のギルドに切り替えて3日冒険します。ギルドや船はゲーム内では一つしか持てませんので、一つのギルドに統合して物語上別々として扱います。
 それぞれのギルドの活動は、
★ギルド『ツーカチッテ』:通常の小説形式
★ギルド『C.A.S.W』:ギルドメンバー「ナナビー」の日記形式

で綴られていきます。
 二つのギルドと二人の少年の冒険がこの迷宮の果てにどんな結末を迎えるのか、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

六代目 twitter

淀む三日間(その1)

 「ギルド「ツーカチッテ」のメンバーは明日朝、港へ集合しろ」
宿の掲示板にその連絡、というか命令が書き込まれたのはナーバンが姿を消してから3日ほどが過ぎた深夜のことである。
最初に見つけたのは酒場から朝帰りしたキタツミだった。
「っのバカ……」
舌打ちと共にずんずんと歩きだして廊下の突き当たり、ナーバンの部屋へと至る。
「いるの?おーい?」
冒険者が起き出すまではまだしばらくあったが、そんなことはお構い無しにドア叩くが返事はなかった。
しんと静まる廊下で体に残るアルコールの残滓を冷ますように深呼吸をして気を整えると、ドアの向こうの空虚な気配が伝わってきた。
「いない……か」
キタツミは自分の部屋に戻りベッドに身を横たえる。空は白み、窓から見える水平線から覗く太陽が肌に少しだけ汗を浮かせた。
今日もまた、熱い一日になるのだろう。


「集まったな」
インバーの港でギルドメンバーを前にしてのナーバンの第一声はそれだった。そして第二声はなくすたすたと船へと歩きだす。
「ちょい待ち。アンタ他に言うこと……あるわきゃないか……」
もう無視されるのにも慣れたキタツミは去り行く背中に弱々しくかけた言葉が地に落ちるのを確認して後に続く。
アワザはキタツミの方を向いてお手上げのジェスチャーを行い、エリホはいち早く走り出してナーバンの腕にぶら下がっていた。
「そういえばナーバン様」
「なんだ」
「この船の名前はお決めになったのですか?」
「船……名前か、必要か?」
「やはり、他のギルドもつけておりますし」
「ふむ……」
遠くからその様子を見てキタツミはまたむくれる。
「エリホちゃんには返事するのよねぇ」
「都合の悪いことは聞かない主義のようだな」
アワザがそう呟くと、シバンポが割って入った。
「アレはもうキョイゾンですネ。気をつけンと危ナイのデス!」
「キョイゾン?」
「ソです!チューイして見るのがイイですヨ」
「よくわかんないけど、あの二人に注意しろってことね……まあわかっちゃいるんだけどね……」
前方ではナーバンが船の名前を完全に思いつきで「ビフォアサウザン」として、それをエリホが絶賛している。
「アタシなんかと喋ってるより本人が幸せそうだからなぁ」
ぽりぽりと頬を掻く姿はなんだか嫉妬しているようにも見えてアワザは思わず笑ってしまう。
シバンポはそんな様子を知ってか知らずかまたニコニコとただ微笑んでいた。


船の上ではナーバンが難しい顔をして波間に映る朝日を眺めていた。
「どこに行ってらしたのですか?」
エリホが控えめに尋ねるが、ナーバンは答えない。
ただ、キタツミに対しては徹底的に無視を貫くのに対しエリホ相手だと少し困ったような表情になるのはやはりなにか後ろめたさがあるのかもしれなかった。
「お答えいただけないのなら仕方ないです。でも危ないことはお止めくださいね」
「ああ」
「操舵を替わって参ります」
「ああ」
心配げな顔をナーバンの脳裏に残してエリホは舵へと向かう。
どんな冒険者でも操れるように極力簡素化された舵ではあったが、基本的にエリホが担当していたのは曲がりなりにも海賊であった経験からだ。
ちなみに他の面子はというとナーバンはそもそもやる気がなく、シバンポに任せるのは不安だと全員が止めた。アワザは出来ないこともないらしいが積極的にはやらず、エリホが離れる際にはほとんどキタツミが舵をとっていた。本人曰く
「アタシは武者修行でそこらじゅう廻ってたから最低限なんでもできるよ」
とのことだった。
というわけで、エリホと交代してキタツミがナーバンの前に顔を見せたのだが、当然のようにナーバンは仏頂面で気にする様子もなかった。
「調子どう?」
やはり無言。
「なんで船なの?」
当然無言。
「樹海に行きたくないの?あんなに執着してたのに」
「行きたいに決まってるだろう!」
急に大声をあげ、拳をマストに打ちつけたナーバンにキタツミはたじろぐ。怒っている、というよりはなにかに葛藤し悩んでいるような表情だった。
「……気持ちの切り替えがうまく出来ていないだけだ」
が、その表情もすぐにいつもの不機嫌そうなものに戻り吐き捨てた言葉と共に手振りでキタツミを追い払う。
キタツミはそれを見て、これ以上の追求は互いのためにならぬとその場を後にしたが、案の定いつもの違和感に襲われていた。
「探索したいのに行かない?行けない?気持ちの切り替えってことは、何か別のことをしてたってこと?……あんなに樹海の奥に行きたいヤツが?」
(また、矛盾している)
積み重なる矛盾は増えるばかり。キタツミの心には硬く閉ざされたナーバンの心の隙間に挟みこまれた矛盾の楔がいくつも見えていた。
だがそれはまだ浅く、その扉が開くのはもう少し先のことである。
今はただその背中に纏う危うさから目を離さぬよう見つめ続けるだけであった。



もくじ

キャラクター紹介
★冒険記
プロローグA「放たれた少年ナーバン」
プロローグB「受難の少年ナナビー」
始まりの六日間
01 02 03 04 05 06
ナナビーのぼうけん
01 02

前作「ゆぐどらぐらし」
ツーカチッテ

C.A.S.W

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